「毎日の食卓に本物の発酵を」添加物に頼らぬ手作りの味。はじめのキムチ・前多さんの想い
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厨房の扉を開けると、澄んだだしの香りとごま油の香ばしさがふわりと鼻をくすぐる。どこか懐かしく、同時に背筋が伸びるような清潔感に包まれた空間で、「はじめのキムチ」は日々、丁寧に仕込まれている。
日本の食卓において、キムチは日常に欠かせない常備菜となった。昔ながらの自然な乳酸発酵と国産素材の生命力にこだわり続けるのが、店主の前多さんだ。店舗ではキムチだけでなく、名物の「はじめのキンパ」や手創りの韓国惣菜のテイクアウトも展開し、地域の人々の食生活に寄り添っている。

原体験と葛藤
前多さんがこの道を志した原点は、かつて口にした本場の発酵キムチや家庭的な韓国料理がもたらした衝撃と、現代の食品流通に対する静かな疑問にあった。手軽さやコストが優先されるあまり、本来なら時間をかけて生まれるはずの乳酸菌の旨味や、素材を活かす手創りの恩恵が削ぎ落とされている現状に、強い違和感を抱いたという。
「本来のキムチは、生きている発酵食です。薬膳の知恵が詰まった伝統食でありながら、化学調味料の強い味ばかりが前に出る現状を変えたかった。毎日家族に食べさせたいと心から思える、素直で滋味深いキムチや惣菜を自分の手で創りたいと考えたのが始まりでした」
だが、保存料や添加物に頼らない手創りは、決して平坦な道ではなかった。天候や湿度によって野菜の水分量は日々変わり、発酵の進み具合も一定ではない。安定した味を再現できず、試作を重ねては頭を抱える日々が続いた。それでも前多さんは妥協することなく、素材と微生物が織りなす繊細な変化にじっくりと向き合い続けた。
独自のこだわり・技術・サービスの真髄
「はじめのキムチ」が掲げる最大の核は、野菜本来の甘みと食感を損なわない極めて緻密な手仕事にある。仕入れから下処理、漬け込みに至るすべての工程において、機械任せにしない人の手による微調整が施されている。
- 野菜の状態を見極める手振り塩:白菜の巻きや水分の含み具合に合わせ、一枚一枚に振る塩の量を加減する。
- 素材本来の味と薬念(ヤンニョム):厳選した唐辛子に、魚介だしや果実の自然な甘みを掛け合わせ、奥行きのある辛味を生み出す。
- 具沢山の「はじめのキンパ」と手作り惣菜:キムチ同様に添加物を極力控え、ナムルや卵焼きなど一つひとつの具材の味付けにこだわったキンパや、心温まる家庭的な韓国惣菜を日替わりで提供する。

「塩漬けひとつで、キムチの骨格が決まります。そして惣菜も同じく、下ごしらえの丁寧さが味の輪郭を作ります。野菜が持つ命の力を信じ、その良さを最大限に引き出すのが私たちの役割です」
一口食べると、まず広がるのは唐辛子の澄んだ辛みや素材のみずみずしい甘み。そして後から、じわりと深いだしのコクが追いかけてくる。刺激の強さではなく、身体にすっと染み入るような優しさが特徴だ。
お客様との向き合い方・アフターフォロー
前多さんが大切にしているのは、商品をただ手渡すことではない。購入した人が日々の生活の中でキムチや惣菜をどう味わい、どう健康に役立てていくかという食卓の日常への寄り添いだ。
自然発酵のキムチは、時間の経過とともに刻一刻と表情を変える。届いたばかりのフレッシュな浅漬けの食感から、乳酸菌が増えて酸味と旨味が深まる熟成期まで、その移ろい自体が一つの食体験となる。テイクアウトの惣菜やキンパも、その日の食卓を豊かにし、家事の負担を減らしながらも「身体に良いものを食べた」という安心感を与えてくれる。

店頭やSNSを通じて、前多さんは保存のコツや食べ頃の見極め方、さらには酸味が立った後のキムチの料理へのアレンジ方法まで細やかに伝えている。
「酸っぱくなったキムチは、決して劣化ではありません。乳酸菌がしっかりと働いた証拠です。炒め物や鍋に使うことで、火を通しても奥深い旨味が出ます。キンパや惣菜と一緒に、最後のひと口まで美味しく、身体に嬉しい形で召し上がっていただきたいですね」
今後の展望・メッセージ
食の簡便化が進む現代だからこそ、手仕事のぬくもりと発酵の持つ力を丁寧に届けていきたいと、前多さんは語る。今後は定番の白菜や大根だけでなく、季節の旬野菜を取り入れた新しい発酵の提案や、身体が喜ぶ惣菜のレパートリー拡充にも意欲を燃やす。
「キムチや韓国惣菜を通じて、食べる人の身体と心が健やかになるきっかけを届けたい。特別なご馳走ではなく、毎日のお椀の隣に当たり前にあるような、安心できる味であり続けたいと思っています」

一口ごとに身体が喜び、日々の暮らしを底から支えてくれるような温かな手創り食。「はじめのキムチ」の透明感ある旨味は、愚直なまでの誠実さから生み出されている。
取材・文=みつかるグラム編集部

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